西日本新聞朝刊2010.5.2
西日本新聞朝刊2010.5.2

西日本新聞朝刊の連載記事【筑豊  甘ダイヤものがたり】最終回に、魔法のバースデーケーキが取り上げられました。ご紹介します。

世界に1つの立体形

まぐろのケーキ

「仮面ライダー、フェラーリ、サッカーボールに本場大間(青森県)のマグロ―。どんな注文も、立体的なケーキに仕上げて見せます」

ネット販売の洋菓子店「魔法のバースデーケーキ」(香春町香春)。切り盛りする吉松清美さんと宮本光浩さん、別の洋菓子店を開く扇山隆さんの宣言は、「月平均80件の注文」という自信に裏打ちされた挑戦状だ。

それだけに出来上がりは半端じゃない。スポーツカーなら流線形の車体のみならずタイヤのホイール、ワインのラベルの文字、アニメの主人公の髪の毛一本までこだわり、「魚も今まさに水揚げされたようでしょ」と吉松さん。

魚のケーキ

注文主の要望を何回も聞き、それを基にスポンジを小型ナイフで削り成型。食紅や竹炭などで鮮やかに色付けした生クリームで飾ると、3人の魔法がこもる「世界に一つだけのケーキ」が完成する。

自動車整備工場を経営する宮本さんは2008年、事務員だった吉松さんとネットショップセミナーを受講した。

自身の店のケーキをネット販売することを考えていた宮本さんの義弟の扇山さんと意気投合。「単なるネット販売じゃつまらない。どんな注文にも応える完全オーダーメードの店をつくろう」と同年11月から始めた。

取材風景1取材風景2

最初の注文は、子供向け番組に出てくる車だった。「できるかもしれんけど・・・」と及び腰だった扇山さん。しかし写真を見ながら数日後に完成。車体といい、ボディーの色といい「本物そっくり」(吉松さん)というほどの出来栄えで、2人はただ驚いた。

以来、次々に注文が舞い込んでは「ナイフを入れるのがもったいない」「青色のクリームを食べるのは抵抗があったけど、おいしかった」などのお礼の声が相次ぎ、子どもの誕生日会の様子をメールで実況中継してくれる家族もいた。

イラストプレートケーキ

吉松さんは「要望を何十回も細かく聞くことで、お客さんは『どんなケーキかな』とわくわくする気持ちが高まってくるんです」。要望の少ない人には、宮本さんと集めた雑誌や写真を基に「ナンバープレートは何番にしますか」「アニメの主人公の表情は」と“逆注文”。「多少ハードルが高いと思っても売り込みます。扇山さんが腕を振ってくれますから」

そのたびに扇山さんは「味も見た目も、誰にも負けん」とお客さんの喜びを励みにしている。

魔法のバースデーケーキ

腕利き職人集め、「スイーツバレー」に

筑豊は、全国に名をはせる数々の銘菓が生まれた「甘味処」。菓子に対する厳しい目と腕を持った職人が少なくない。この店で働く筑豊の『魔法使い』を探している宮本さんは「今いる菓子職人も全国に発信し、筑豊かをシリコンバレーならぬ『スイーツバレー』にしたい」。3人は今後も、筑豊が誇る「甘ダイヤ」をさらに磨く「魔法」をかけ続けるつもりだ。

田川市川渡り神幸祭 イラストケーキ